第6章 別れの追憶

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「どうでもいいけどね、あなたはそこに座らないで、あっちの奥のテーブルに一人(・・)で座ってちょうだい」 「えーっ」 満琉はやはりピリピリしている。 コーヒーを淹れる手つきがたどたどしくも見える。 赤面してる場合ではない… 「満琉さん、私が…」 葵はミルを挽く満琉の手に手を添える。 満琉の手はとても冷たかった。 「少し横になったらどうですか?」 「余計なお世話って言いたいところだけど、ちょっと座ろうかしら」 満琉は力なく微笑みカウンターを出た。 そのままソファに崩れるように座る。 かなり疲弊して見えた。 「ところでさ、今更なんすけど…何があったわけ??」 和希が葵と満琉を交互に見やり、戸惑いを浮かべる。 そういえば、要にはあっさり説明を省かれていた。 自分が説明していいものなのか、葵は少し躊躇う。 「…仲間がね、元聖域に向かったまま消息を絶ったのよ。ぐしゃぐしゃの車を残してね」 満琉が絞り出すような声を出す。 満琉が車の件を知っているのは意外だった。 てっきり要にだけ入った情報だと思い、満琉にはまだ伏せておきたい気持ちがあったのだ。 「大丈夫よ…もう取り乱したりしないから」 葵の表情で察したのか、満琉が切なく笑った。     
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