第6章 別れの追憶

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「西園寺の情報はイヤでも耳に入るの。祥吾、あれでも唯一の後継者でしょう。だから彼に何があった時は、養女でありここ(・・)の責任者である私に情報がくるようになってるのよ」 「へー、西園寺スゲェ」 軽い口調で割って入る和希を満琉は睨みつける。 「もうほんとお陰様で(・・・・)取り乱す余裕もなくなったわ」 「イヤイヤそんな、お陰様だなんて」 アハハ、と和希が照れ笑う。 「褒めてないわよっ!」 満琉が冷ややかな声音で吐き捨てる。 葵は思わず笑ってしまいながら、淹れたてのコーヒーをカップに注ぐ。 きっと満琉と二人で待つだけだったら、こんな風に笑えなかったと思う。 きっと要はすぐに戻らない。 数時間で終わる事態ではないだろう。 気を張り続けていても駄目だ。 和希の持つ空気は良くも悪くも緊張感がない。 今はそれが助かる。 「はい、和希くん」 和希の前にコーヒーを差し出し、葵は満琉と自分のカップを手にソファへと向かう。 「…ども」 とても小さな声で和希が呟いて、カップを手にした。 「ありがとね、葵ちゃん」 満琉がカップを受け取り、口をつける。 「ほんとはカフェインとらずに眠って欲しいんですけど、眠れませんよね」 「あ、眠るって言えば」 満琉が何か閃いたように瞳を輝かせ、隣に座った葵の顔を覗きこんだ。 「気になってたんだけど、起きたら要がいなかった発言あったじゃない!あなたたち、一緒に眠ってるの?」 「は?え……」     
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