第6章 別れの追憶

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ブッ、とカウンターで和希がコーヒーを噴き出した。 「汚いわね…」と満琉が顔をしかめた。 葵は狼狽えて頬を染める。 そんなこと、いつ口走ったのかわからない。 実際、いつの間にやら寝起きを共にし、同棲の話も出ていたりするし、プロポーズ紛いのこともあったり… 「その…、あの」 和希の前だし返答に困る。 「うん、その顔でわかったわ」 満足気に満琉は口元を緩めた。 「要って、完全にロールキャベツ系よね」 「ろーるきゃべつ?なんだソレ」 和希が口元を拭いながら振り返る。 「見た目草食系男子だけど、開いてビックリ中身はギッシリ肉、実は肉食系。見た目とは裏腹にやることはやるし、手が早いのよ。…その辺ちゃんと拭いてよね」 満琉がカウンターの上のダスターを指差し、和希が「へーい」とダスターを手にした。 「そんなんじゃないんですよっ、要くん、すごく紳士だし」 葵はあたふたと手を振る。 要は手慣れてはいるし、何もされてないわけではないけれど、一定の範疇は守っている。 「アレだな、アレ、ムッツリってヤツ」 「ちょ、ちょっと!違うもんっ」 楽しそうに笑う和希に葵は叫ぶ。 「一緒に寝てるだけだし!しても、その…キ、キスくらいで」 言いながら葵は顔が熱くてクラクラしそうになった。     
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