第6章 別れの追憶

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【 追跡 】 事故現場は元聖域からそれ程離れた場所ではなかった。 すでに現場検証が入り、捜査員の姿もある。 篠宮も祥吾も見つかってはいない。 要は木陰に身を隠し、様子を伺う。 下手に姿を見せる訳にはいかない… (やるしかないか…) 要は片膝を落とし、地面に右手をつく。 目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませた。 現場から半径1キロメートル、樹海の地面に含まれる水分、落ち葉につく朝露… それらが教えてくれる、足跡の軌跡を。 現場検証や周辺の捜索で足跡は多い。 割り出すべきは、元聖域に向かう軌跡。 4時間程前に複数、3時間程前に一つ、左側の足跡が浅い。 (…手負い?) どうやら祥吾か篠宮が元聖域に向かっている。 集中を解くと、一気に脱力感に襲われる。 要は乱れた呼吸を整える間も無く、元聖域に向かった。 木々の合間を駆け抜けながら、足跡を追う。 歩ける程度なら大した怪我ではないのか、足跡は確実に元聖域を目指している。 ふと、前方に人影が見えて、要は手頃な枝の上へと飛び乗った。 …二体、三体、当て所なく徘徊している。     
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