第6章 別れの追憶

23/30
221人が本棚に入れています
本棚に追加
/298ページ
彼らの頭上に微かに見える黒い霧状のもやが、闇に取り憑かれた人間、闇人(やみびと)の特徴だ。 闇人(やみびと)を作り出す能力… 一族の中で、忌み嫌われた能力。 (間違いない、暁華がいる) そして、その狙いもわかった。 300年程前に天使えの一族は、溶岩層のこの樹海に移り住んだ。 結界で一族の秘密を守り、外部からの干渉を防いだのだ。 今も微弱ではあるが、結界がある。 他の地に聖域を移す時に、(やしろ)に総帥珠妃の髪を一房残した。 (やしろ)には捨てきれない思い出が、そして故郷を、残したいと言う思いもあった。 捨てきれなかった…。 あの時、どうしても別れることができずに、今に至るまでそのままにしていた。 そこを暁華に付け入れられたのだ。 現聖域(スローネ)の結界は、(やしろ)にある珠妃の髪を燃やすとその効力が一時的に揺らぐ。 和希を泳がせ、暁華自身が身を潜めることで、祥吾と篠宮を元聖域に誘き寄せ、戦力を削いだ上での、現聖域(スローネ)の奇襲。 そして髪を燃やす為に、暁華は元聖域で自分を待っている。 そこには祥吾か篠宮がいるはずだ。 闇人(やみびと)に見つからず先を急ぐには、樹上を行く方が速そうだ。 暁華を制すれば、闇人(やみびと)から闇は離れる。 (まずは元聖域へ…)
/298ページ

最初のコメントを投稿しよう!