第6章 別れの追憶

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【 理由 】 それは突然のことだった。 外門が凄まじい爆音と共に砕け散った。 結界に守られた世界しか知らない人々は、驚きの中それを目にしてもなお、即座には理解できなかったのだ。 何が起きたか、これから何が起きるのか… 雪崩れ込む兵の数を目にしても。 「父ちゃんっ!…父ちゃん!!」 その中で、一番早く事態に対処した父。 「…陣、逃げろ」 燃え盛る家々、あちこちで上がる悲鳴、飛び散る血、血、血… 手首から先のない左腕を父が持ち上げる。 「塀の…外へ、逃げるんだ」 父の右腕は肩から先を無くしてる。 母は妹を抱えたまま死んだ。 「だ、大丈夫だっ、父ちゃん!兄ちゃんが、兄ちゃんが…」 父が、その能力を認めている兄。 優しく強い、兄が… 「兄ちゃんが助けに来てくれる!」 この事態を知れば、父を自分を、必ず助けに。 「…きくん、和希くん」 和希は名前を呼ばれ、我に帰る。 まず視覚からの場所把握と、状況認識。 そうだ、ここは現聖域…そして目の前には、日向 葵。 カウンターで一つ席を空け隣に座っている。 背後のソファには横になり眠る満琉。 「やべ…トリップしてた」     
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