第6章 別れの追憶

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和希はカウンターに肘をついて顔を両手で覆う。 「トリップ?…え?脱ぐの??」 年の割に童顔なその人物は、持ち前の天然さで首を傾げる。 「脱げっつーなら脱ぐけど…ストリップじゃなくて、トリップ!」 「それって、もしかして白昼夢みたいな?」 「おっ、それそれ」 前世での兄、蒼麻の恋君(こいぎみ)にして妹、架南の生まれ変わり。 (今は堂々と恋人か…) かなり、色々、微妙な感じで複雑だ。 「覚醒間もないとあるんだってなー」 和希は背伸びをする。 「和希くんも覚醒したばかりなの?」 葵は元々目が大きいから目を丸くすると一層インパクトがある。 吸い込まれそうな輝きを放つ瞳。 瞳の大きさは前世(まえ)と変わらない。 「…ああ、まーな。古参ではねぇよ」 「じゃあ、仲間だね」 ニッコリと屈託無く笑う顔。 (ここはぜんっぜん似てねー) 氷輪のごとく、美しさの中に冷たさが宿る、綺麗で卒のない人形のような顔立ちだった、あの女とは真逆の笑顔。 (見てると和むんだな、コレが) あの男が惹かれるのもコレなのか… 架南の生まれ変わりなら、何だっていいのか、違うからこそいいのか。 「和希くん?」 「えあ?あ、ナニ?」 葵の顔を見たまま考えこんでしまっていたので、葵が訝しげにこちらを見ている。     
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