第6章 別れの追憶

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「また白昼夢かと思ったよ」 「葵ちゃんはさ、強襲の日の夢、見た?」 「…きょうしゅう?」 和希はイスを反転させ、葵へと向き直った。 「暁華が産まれた日の」 葵がハッとしてとたんに青ざめた。 「…見た、よ」 「あん時、あいつ…ずっと架南を守ってたんだよな」 葵はふいっと顔をそらす。 罪悪感からかと思ったが、その目はどこか寂しげだった。 「…うん、母屋をね、守ってくれたよ。だけど、途中までしか見てないからずっとかわからないなぁ」 「結界が復活して、事が治るまで、ずっーとあいつはあんたを守ったよ」 「そう…なんだ」 葵は複雑な横顔を見せる。 守られて喜びはしないのだろうか。 「…んで、オレらを見捨てた」 「えっ…?」 葵が驚いて顔を向けてきた。 「村から母屋へ続く門はオレの、陣の親父が守ってた。襲われりゃ前線で親父が戦うのを知ってて、助けに来なかったんだよっ、あいつは!」 葵に怒りをぶつけるつもりはなかった。 葵に罪はない。 それはわかっている。 「あいつは、そうやってオレらを見捨てて英雄になりやがったんだ」 和希はカウンターに拳を叩きつける。 葵はそれを見て眉をしかめたが、目をそらしはしなかった。 「それが蒼麻さんを憎む理由?」 ひどく静かに葵が問いかけてくる。     
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