221人が本棚に入れています
本棚に追加
/298ページ
【 追憶 】
木立が急に途切れる。
天使えの生まれ変わり以外には、ただの何もない平原にしか見えない。
だが結界を越えれば、そこには社がある。
花に囲まれ、淡い光に包まれた社…
要は社の前に立つ。
最後にここへ来たのはいつだったか…
要は大きく深く息を吐く。
「…いるんだろ」
要は左側へと視線だけを向けた。
「出てこい」
木立の陰で気配が動く。
長身細身、見慣れたその顔。
「よく来たな…」
的中して欲しくはなかった予測。
危惧していたシチュエーション…
「元気そうで何よりだ、篠宮」
要は社から離れ、間合いを詰める。
「祥吾さんは生きているのか?」
要の問いに、篠宮は木陰に手を伸ばす。
引きずり出される体は、ぐったりと力なく篠宮の足元へと転がる。
「かろうじて、だ」
息はあるように見える。
だが、時間には限りがある。
「さて、本題に入ろうか、篠宮」
要は足を止める。
結界を挟み2メートルの距離で対峙する。
「…いや、暁華と呼ぶべきか」
篠宮の顔から笑みが消える。
そして眼鏡に手をかけ、外した。
「全てお見通し、と言うことだな。流石は兄様」
最初のコメントを投稿しよう!