第6章 別れの追憶

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【 追憶 】 木立が急に途切れる。 天使えの生まれ変わり以外には、ただの何もない平原にしか見えない。 だが結界を越えれば、そこには社がある。 花に囲まれ、淡い光に包まれた社… 要は社の前に立つ。 最後にここへ来たのはいつだったか… 要は大きく深く息を吐く。 「…いるんだろ」 要は左側へと視線だけを向けた。 「出てこい」 木立の陰で気配が動く。 長身細身、見慣れたその顔。 「よく来たな…」 的中して欲しくはなかった予測。 危惧していたシチュエーション… 「元気そうで何よりだ、篠宮」 要は社から離れ、間合いを詰める。 「祥吾さんは生きているのか?」 要の問いに、篠宮は木陰に手を伸ばす。 引きずり出される体は、ぐったりと力なく篠宮の足元へと転がる。 「かろうじて、だ」 息はあるように見える。 だが、時間には限りがある。 「さて、本題に入ろうか、篠宮」 要は足を止める。 結界を挟み2メートルの距離で対峙する。 「…いや、暁華と呼ぶべきか」 篠宮の顔から笑みが消える。 そして眼鏡に手をかけ、外した。 「全てお見通し、と言うことだな。流石は兄様」     
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