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「兄様か…この前は貴様呼ばわりだったが。どちらにせよ、その姿で言われても実感はないな」
暁華の能力は天使えの者には使えないはずだったが、数百年の月日の中でそんな定義も崩れてきたと言うことか。
結局は、この聖域に移り住む以前、一族を離れた者たちが遺してくれた僅かな血の上にしか、天使えは転生できない。
繰り返される交配の中、血は薄れゆく…
祥吾より、篠宮の血が薄かったのか。
「二人を返して欲しいところだが、すんなりとはいきそうにないな」
要は吐息混じりに腕を組む。
「髪を燃やせ…」
暁華が篠宮の顔で嘲笑う。
「その手で、燃やして貰おう」
「…なるほど」
祥吾にやらせず、待っていた訳はやはりそう言うことか…
(やらせようにも祥吾は従えないか)
要は祥吾を見やる。
全く動く気配はない。
その祥吾の背中に、暁華は片足を乗せた。
「恐らく、肋が折れているぞ。こうすれば、折れた肋骨が肺にささるかもな」
ぐっと、押し付けられた祥吾の背中が沈む。
「…あの女に折られた肋骨の痛み、忘れられんよ」
「誤算だっただろう?彼女は予測を裏切るぞ」
「抜け抜けとっ…」
ギリッギリと、暁華の怒りに噛み締めた篠宮の歯が鳴り、足に力が込められた。
これ以上の刺激は祥吾に支障が出そうだ。
髪を燃やすと、現聖域の結界は揺らぐ。
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