第7章 陽だまりの天使たち

5/39

221人が本棚に入れています
本棚に追加
/298ページ
【 聲 】 (こえ)が聞こえた。 「ただいま」と言う要の声。 葵は手にしていたサーバーを落とす。 店のドアを咄嗟に見やるが、誰もいない。 「うおっ、ビクッた…何だよ」 サーバーが割れる音に驚き、和希は怪訝に眉根を寄せた。 「…どうしたの?」 ソファから満琉が体を起こす。 「ごめんなさい…」 何だろうか、嫌な予感がする。 背筋を走る寒気と、胸が苦しいほどの不安感。 ただいま、と言う要の言葉を待ちわびているせいなのか。 なぜ、その言葉なのか… 要が誰かに言ったのだろうか。 言うとしたら。 「…元聖域に、着いた?」 ぼんやりとした葵の独白に、割れたサーバーを片付けにきた満琉がハッとした。 「わかるの?」 「あ…いえ、何となく」 満琉が時計を見る。 「順当に行けば、要の脚なら着いてるわね」 「あ、あし?あいつ、走って行ったワケ?」 和希が唖然とする。 「人目を避ければ車より速いのよ」 割れたサーバーを片付け、満琉がカウンターに立つ。 「マジで人間じゃねーわ…」 呟いた和希を睨みつけ、満琉は髪を束ね上げた。 「満琉さん、ごめんなさい」 「大丈夫よ。…それより、顔色悪いわよ?」     
/298ページ

最初のコメントを投稿しよう!

221人が本棚に入れています
本棚に追加