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【 聲 】
聲が聞こえた。
「ただいま」と言う要の声。
葵は手にしていたサーバーを落とす。
店のドアを咄嗟に見やるが、誰もいない。
「うおっ、ビクッた…何だよ」
サーバーが割れる音に驚き、和希は怪訝に眉根を寄せた。
「…どうしたの?」
ソファから満琉が体を起こす。
「ごめんなさい…」
何だろうか、嫌な予感がする。
背筋を走る寒気と、胸が苦しいほどの不安感。
ただいま、と言う要の言葉を待ちわびているせいなのか。
なぜ、その言葉なのか…
要が誰かに言ったのだろうか。
言うとしたら。
「…元聖域に、着いた?」
ぼんやりとした葵の独白に、割れたサーバーを片付けにきた満琉がハッとした。
「わかるの?」
「あ…いえ、何となく」
満琉が時計を見る。
「順当に行けば、要の脚なら着いてるわね」
「あ、あし?あいつ、走って行ったワケ?」
和希が唖然とする。
「人目を避ければ車より速いのよ」
割れたサーバーを片付け、満琉がカウンターに立つ。
「マジで人間じゃねーわ…」
呟いた和希を睨みつけ、満琉は髪を束ね上げた。
「満琉さん、ごめんなさい」
「大丈夫よ。…それより、顔色悪いわよ?」
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