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うつむく葵の顔を満琉は覗きこんだ。
白昼夢とは違う。
そんな聞こえ方ではなく…
「切なそうな要くんの聲が聞こえて…あの、満琉さん?」
葵は満琉の目を見つめる。
「元聖域には、架南がいるんじゃないんですか?」
満琉が意表をつかれ、固唾を呑む。
「葵ちゃん、何それ…」
「お二人さん、静かに!」
和希が深妙な顔つきで人差し指を口元に立てた。
そして、しゃがめと合図を送ってきた。
満琉が頷き、葵の肩を押す。
二人がカウンターの中にしゃがむと、和希は体勢を低く構え、ドアまで走る。
壁に背をつけ、ドアにある格子状のガラス窓から外を窺った。
向かって左を指差し三本、指を立てる。
「どうやら三人以上の闇人がいるようね」
満琉が声を潜める。
「やみびと?取り憑かれた人ですか?」
「そうよ…それより、さっきの架南がいるって、どういうこと?」
満琉は知らない…
言葉では説明できない不思議な直感。
以前、要が口にした『すまない』と言う言葉、あの時の聲のトーンに似ていた。
今はいない、架南に向けた言葉。
「…ちょいちょい、お二人さん」
四つん這いに和希がカウンターに入ってきた。
「ここのセキュリティーって結界オンリー??」
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