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「外部からの出入口は店と裏口で2ヶ所、裏口はナンバーキーよ。裏口は5階まで階段があって、各階に防火扉で遮断できるわね。窓ガラスは全て防弾ガラス…ちなみに、ナンバーキーや防火扉の操作は6階でもできるわよ」
「何の要塞ですかね、ここは…」
カウンターの影から外の様子を窺いながら、和希が苦笑した。
「…でもまぁ籠城はできるよな」
ポツリと和希が呟いた、その時だった。
ビリビリっと下から上に微弱な電流が走るような、そんな衝撃が体を駆け抜けた。
視界が揺れて、ブレる。
「…っ」
そして、呼吸ができなくなった。
吸って吐く、今まで考えなくてもできていたことが、わからなくなった。
葵は喉元を押さえ、崩れ込む。
「葵ちゃん?!」
慌てた満琉の声がどこか遠い。
「なんだよっ、おい!」
和希が背中に手を置いている。
少し呼吸が楽になるのがわかった。
「結界が消えたのかも…」
「マジか…ヤバいだろ、それ」
「とりあえず、隣の部屋に」
満琉に言われ、和希が抱え上げてくれるのがわかった。
廊下に出る時、店の外が垣間見えた。
窓ガラスを埋め尽くすように、人が張り付いている。
無数の虚ろな瞳がこちらを見ていた。
「葵ちゃん、大丈夫?息できる?」
和希が葵をソファに下ろし、満琉が心配そうに声をかけてくる。
「…へい、き」
「平気じゃないでしょ、バカね」
呼吸の合間で返した言葉に満琉が嘆息する。
一瞬、息が止まるかと思った。
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