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要の言葉に応じる様に、要の左手薬指から白く淡い光が膨らんだ。
一糸の髪が巻き付けられた薬指から。
「…我が血を持って、封じよ」
要の言葉と共に光が電光を生じ、小さな稲光のように輝いた。
「…ぐっ」
篠宮の口から鳴咽が漏れる。
「そんな…出来るはずが」
要は左手をゆっくりと篠宮の額から離して行く。
ズルズルと篠宮の額から黒いもやが引き出され、光に取り込まれた。
「珠妃の髪を抜き取っておいた…効力は低いが天使えの血がこれだけあれば、捕まえる事ぐらいは可能だ」
現存する中で一番濃い天使えの血、総帥珠妃の髪、そして珠妃の娘架南の遺灰…
浄化まではできないが、簡易封印であればできる。
「眠って貰おう…暁華」
完全に黒いもやが光の中へと消え、篠宮の右手から柄が放された。
要は白い光を握りしめ、そのまま仰向けに倒れこむ。
青い空が視界いっぱいに広がる。
「…生きてるか?」
同じく地面に倒れこんでいるであろう祥吾が歯切れの悪い声を上げた。
「それはこちらの台詞ですね…」
「憎まれっ子世に憚るって言うだろ。俺は簡単に死なん」
「それならもっと乱暴に扱っても大丈夫でしたね」
「鬼だな…」
強がっているだけで祥吾が軽症ではない事はわかる。
暁華の気をそらす間、後方に回り込むまでかなり苦労していた。
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