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【 伏兵 】
「あー、重て…」
2階の踊り場で、ぼやきながら和希が葵を下ろす。
階段を上りながら背中に扉を叩く音を聞いた。
金属製の扉はやけに派手な音を響かせ、恐怖を煽る。
「防火扉閉めっから、ちょい待ちで」
ゼェゼェと肩で大きく息をして和希は壁に手をつく。
「和希くん、ありがとね…」
その背中に葵は声をかけた。
「そーいうの後で言って。あんた重過ぎて、なんかオレ、もう挫けそ…」
「なっ…何それっ、そんなに重くないよ!」
「ゼッテー標準体重こえてんだろ…って、アレ?」
防火扉に手をかけて和希が首を傾げた。
「なんだコレ、動かねー」
和希の背中を眺めながら、葵は和希の言葉を思い出す。
『あんたを守るんだよ!!』
あれは嘘ではないだろう…
暁華とまだ繋がりがあるとわかる前は、迷いなく信じられたのに、疑念が晴れない。
だけど今、確実に守られている。
息を切らせ、汗を流し、必死になる姿が本当だと信じたい。
「…なぁ?おいっ」
突然肩を掴まれ、和希に覗きこまれた。
和希の顔が至近距離にあり、葵は慌てる。
「防火扉、解除のやり方知ってるか?って聞いてるんだよ」
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