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困ったような、拗ねたような、和希の顔。
「…大丈夫かよ?そんなに調子悪いのか?」
両肩を掴まれ、更に顔が近づく。
祥吾に同じことをされたら動揺してしまうし、要にされたら意識してしまうのに、和希だと何とも感じない。
不思議な感覚になった。
「和希くん、和希くんは味方なの?」
和希の顔を見ていると口をついて出た。
「それは、あとで…」
「あとじゃダメ!和希くん、お願い…教えて」
顔を逸らそうとする和希の頬に葵は手を当てる。
驚いたように目を見張った和希は、しばし葵の目を見つめてから息をついた。
「悪かった!マジで、ごめん。乗ったんだよ…あいつの策に」
「あいつって、要くん?」
「暁華の狙いを逆手にとるから、オレはギリギリまで伏兵のフリ」
腑に落ちる部分はたくさんある。
要はわかった上で全て…
「けどな、アレだ…祥吾とか言う人たちの件は予想外つーか、アクシデントだからな」
葵は黙って頷いた。
『報いたいなら、葵を守れ』
『…了解』
あの短い時間での二人のやりとりは、そう言うことがあったからだったのだ。
要の声は、想いは、とっくの前に和希に届いていた。
「あいつのことだから、またそこを逆手にとってどーにかしてるさ」
ぽりぽりと鼻先を掻いて和希は呟く。
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