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口でどうこう言っていても和希は何かと要を意識している。
葵は思わず小さく笑っていた。
「も、もういいだろっ、行くぞ」
恥ずかしそうに和希に吐き捨てて立ち上がる。
階下では、扉を破られる音がした。
和希が支えるように葵の腕を取る。
「なんだよ、意外にもろいな…」
和希は呟きながら、何かを覚悟したようだった。
立ち上がってみると、立つことはできた。
「3階のあんたの部屋に行くぞ」
下からはぞろぞろ湧き上がるように闇人が上がってくる。
防火扉を閉じるにも間に合いそうにない。
和希に背負って貰い階段を上がっても、自力で階段を上がっても同じことだ。
「一人で行けるよな?」
和希が葵から手を放し、階段途中で立ち止まる。
「さっさと部屋に入ってくれよ」
そして、そのまま階段を降りていった。
「和希くん!」
「部屋の前、着いたら呼んでっ」
階段の踊り場手前で和希は上がってきた闇人を蹴り落とす。
捨て身ではない、時間稼ぎだ。
扉は簡単に突破される、部屋に逃げ込んでも対処はできても解決にはならない。
結界の揺らぎはいつまで続くのか…
結界が戻れば、自分の体は戻るのか。
要はどうしているのだろうか。
祥吾は、篠宮は、満琉は…
不安をあげるとキリがない。
(…うまく足が上がらない)
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