221人が本棚に入れています
本棚に追加
【 一族 】
天使(あまつかえ)の一族は、人里離れた山奥に集落を持ち、人目を避けひっそりと暮らしていた。
集落の中央にある総帥珠妃の屋敷、子どもたちは5歳になると親元を離れ、屋敷で暮らす。
「父上、なぜ父上とはいられないの?」
5歳になった冬、架南も父に連れられ屋敷に来た。
「心配ないよ、柊が一緒だ」
同行するのは世話係の乳母のみ、架南は父の足にすがりつき涙をこらえる。
「架南、良く聞きなさい」
架南の目線まで膝を落とし、父は優しく微笑んだ。
「ここにはお前の兄や姉がいる。友達もたくさんいる。あとからは弟や妹もやってくるぞ。皆で一緒に、遊び学び、大人になるのだ」
「そんなのイヤ!架南は父上と柊がいればいいもんっ」
「父はいつだってお前と一緒だ」
トントン、と父が架南の胸を指差す。
「ここにいる」
架南は小さな掌を胸にやり、首を傾げる。
「ここ?」
「そうだ。姿を見たければ瞼の奥に、声を聞きたければ頭の中に、温もりを感じたければ、ここに」
骨ばった父の手が架南の手に重なる。
「いつでも父はお前と共にいる」
優しい父、いつも微笑んで見守ってくれていた父…
最初のコメントを投稿しよう!