第2章 覚醒と恋煩い

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【 一族 】 天使(あまつかえ)の一族は、人里離れた山奥に集落を持ち、人目を避けひっそりと暮らしていた。 集落の中央にある総帥珠妃の屋敷、子どもたちは5歳になると親元を離れ、屋敷で暮らす。 「父上、なぜ父上とはいられないの?」 5歳になった冬、架南も父に連れられ屋敷に来た。 「心配ないよ、柊が一緒だ」 同行するのは世話係の乳母のみ、架南は父の足にすがりつき涙をこらえる。 「架南、良く聞きなさい」 架南の目線まで膝を落とし、父は優しく微笑んだ。 「ここにはお前の兄や姉がいる。友達もたくさんいる。あとからは弟や妹もやってくるぞ。皆で一緒に、遊び学び、大人になるのだ」 「そんなのイヤ!架南は父上と柊がいればいいもんっ」 「父はいつだってお前と一緒だ」 トントン、と父が架南の胸を指差す。 「ここにいる」 架南は小さな掌を胸にやり、首を傾げる。 「ここ?」 「そうだ。姿を見たければ瞼の奥に、声を聞きたければ頭の中に、温もりを感じたければ、ここに」 骨ばった父の手が架南の手に重なる。 「いつでも父はお前と共にいる」 優しい父、いつも微笑んで見守ってくれていた父…     
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