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会いたくて会いたくて、何度も目を閉じた。
二度と会えなかった父を思う。
扉が開く音が微かに聞こえ、葵は目を開ける。
今は現実なのだろうか…
見回しても知らない部屋、誰もいない。
ゆっくり体を起こすと眩暈がした。
何がどうしたのか、わからない。
部屋は殺風景で、ベットしかない。
(男の人の部屋?)
ぼんやりとした記憶を手繰り寄せて、思い出した。
(要くんの部屋だ!)
心配そうに見下ろす要の顔を確かに見た。
熱があって倒れたと言われたような…
手を握ってもらい安心したのは良く覚えているけど、他はおぼろげで見ていた夢のほうが鮮明なのだ。
不思議な感覚。
葵はゆっくりベットから出る。
熱はまだあるようで、体が重い。
自分の体じゃないみたいだ。
ベットから立ち上がろうとしたら、右足首に痛みがあった。
(…そうだ、あの時捻挫して、それで)
満琉の顔が浮かび、ハッとする。
(言われたんだ…架南と蒼麻が)
吐き気がこみ上げた。
そんなわけがない、認めたくない、知りたくない、戻りたくない。
(兄だなんて思ったことないっ)
気持ちが一気に溢れ出す。
『無用な迷いなど、打ち消してくれるわ』
突きつけられる扇子…
招いてしまった婚礼。
(イヤだっ…)
受け入れたくない。
受け入れられない…。
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