第2章 覚醒と恋煩い

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【 憔悴 】 あの時、血相を変えた満琉が呼びに来て、部屋に駆け込むとソファにぐったりと横たわる葵がいた。 息が荒く、顔面蒼白、脈拍が弱くショック状態に陥っていた。 部屋に運ぼうと抱えあげると、体が震えて冷たかった。 要は洗面器の水を取り換えながら、溜め息をつく。 思っていた以上に見守るのは辛い。 覚醒が始まり、40℃の発熱に浮かされながら夢を見ている。 引き金が引き金なだけに、きっと辛い夢を見ている。 蛇口から洗面器に落ちる水を見つめていると、背後に人の気配を感じた。 振り返ると、ニヤニヤした顔の祥吾がいた。 「思いつめた顔しちゃって…」 ローテーブルにサンドウィッチが乗った皿を置き、床に座り込む。 「そう思うならご配慮頂きたいですね」 要はサンドウィッチを見やり更に深い溜め息をつく。 「そんな顔すんなって、まぁアレだ…こうなることを狙ってやった訳じゃないしな」 煙草を取り出しながら祥吾はあぐらをかく。 「お前が怒るのもわかるけどなぁ」 取り出した煙草のフィルター部をトントンとテーブルに打ちつけながら、祥吾はわざとらしく「うんうん」と頷いて見せる。     
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