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寝室で物音がした。
鈍い何かがぶつかるような…
思い当たって寝室へ飛び込むと、床に座り込む葵がいた。
うつむいてフローリングに両手をついている。
「葵さん?!」
膝をついてしゃがみ、背中に触れる。
肩で大きく息をし、床についた両手が震えていた。
「大丈夫ですよ、落ち着いて…」
背中をさすると冷や汗で濡れている。
ベットに戻そうと肩に手を回すと、葵がゆっくり顔を上げた。
血の気のない白い顔。
「葵さん、ベットに…」
目が合い声をかけた時だった。
葵の腕が首筋に回される。
「蒼麻!」
震えた声が名を呼び、しがみついてくる。
意識の混濁。
前世の記憶と現世の記憶が入り混じり、混乱している。
「婚礼なんて嫌っ…お願い、一緒に逃げて」
以前にも聞いたことのある叫びに、要は胸を押しつぶされる。
葵の背中に手を回し、抱きしめた。
「兄と妹になんて…望んでなった訳じゃないのにっ」
すすり泣いて呟かれる痛切な思いがすぐ耳元で聞こえる。
悲しみを抱えたまま架南は逝ってしまった。
何もしてやることができなかった。
要は抱きしめる腕に力を込める。
その要の背中を見つめていた祥吾は、何も言わず部屋を出た。
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