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「何してるんですか、祥吾さん」
静かだけど、どこか冷たい口調
聞き覚えのある声にドキリとする。
「あらら、ナイト登場だね…」
祥吾と呼ばれた男は、口の端でだけ笑い少年の手を振り払うと、初めて見せる冷たい目を向けた。
振り返ると、少年がいた。
「大丈夫ですか?」
静かで優しい声が降りそそぐ。
さっきの冷たい口調とは違い、ホッとした。
改めて向き合うと背が高い。
高校生とは思えない落ち着いた雰囲気
そして今にも消え入りそうな、今にでも目の前から居なくなってしまいそうな、そんな感じがしてしまう。
「ありがとう!この前も、助けてくれてほんとにありがとうございました」
言いそびれてなるものかと、つい早口になる。
聞きたいこともあるし、言いたいこともある。
何から伝えればいいのか、焦ってしまう。
「まだ痛むのでは?こんなところにいていいんですか?」
「どうしても…」
会いたくて、とは言えなかった。
「お礼を言いたくて!」
「…無事ならそれで」
少年が言いかけて、眉をひそめるのと、グイッと、背後から首筋に回された腕に引き寄せられるのが同時だった。
「ここではなんだしさ」
むせるような煙草の匂い。
「店、行こうぜ」
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