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「だれか、居るのですか?」
外から人を探す声が聞こえ、私は歌うことをやめて外の声に耳を傾けた。
「…どこですか?」
少し低い男の人の声。
『此処です』と、私を探しているのわけでもないのについ言ってしまいそうになった。
この人は、どんな人でどんな人を探しているのかしら?
耳を傾けても、その人の声が聞こえなくなってしまったのでまた歌を口ずさむ。
「今、歌っている君はどこにいるの?」
「わた…し…は…。」
私の小さな小さな声に気づいてくれた。
「此処にいます。」
私の声に導かれるように、突然彼の手が格子をつかんだ。
「どうして、こんな所に。」
「それは…。」
私が私のことを伝えてしまったらこの人を不幸にしてしまうかもしれない。何も伝えられない。
「よいっしょ。」
格子を掴んだまま彼。
「君のこと、話せないなら僕の話を聞いてくれませんか。」
「…私で、よろしいのですか?」
「はい。」
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