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空いてる席もなく、ドア脇の手すりに捕まる。
スマホはない。
なんとなく、外に目をやる。
見慣れたような、あまり普段見ていないような、景色を眺める。
電車は、昼間の住宅街や道路の上を抜けていく。
ああ、このあたり、また新しい住宅街ができたんだ。
あの家可愛いな。ピンク色だ。
子どもが電車に手を振ってる。可愛い。
いつの間にか変わっていた景色、暖かい景色に、少しだけ、魅入ってしまう。
いつもより少し長く感じた20分の待ち時間を終えて、待ち合わせの駅に着く。
待ち合わせは、犬の銅像の前。
私の脇を、後ろを、目の前を。
大勢の人が、行ったり来たり。
今何時だろう。
そう思って、ポケットに手を入れる。
あ、そうだ。スマホ忘れたんだった。
また不便さを感じた。
時計を探す。
どこかにあったはず。
待ち合わせ場所から数歩離れたところに、天井に吊るされたデジタルの時計を見つけた。
待ち合わせ時間まで、あと5分。
まぁ、あの子のことだから、あと10分かな。
連絡つかなくて、気にしてるかな。
いや、そんなに気にするタイプじゃないか。
あと10分。暇だ。
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