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隣の席のカレ3
帰りの駅の上りホーム。
氷室さんに連絡しようと携帯を取り出した時、誰かに肩をボンポンと叩かれた。
遠藤さんだった。
走ってきたのか息を切らして、肩を上下にさせている。
「ユリさん。やっぱり送っていきます。店を出るとき、ふらついてましたよ。」
えっ・・・
どうしよう・・・
「遠藤さん・・・・あの、大丈夫ですから。ちゃんと歩けてますし。・・・第一、遠藤さんのお家はこの沿線じゃないですよね?」
「遠慮しないでください!ユリさんを家まで送っても、終電はギリある時間だし。・・・・酔ってる女性を一人では帰せません。」
「本当に大丈夫で・・・・・」
「心配なんで、送らせてください。お願いします!」
まだ息が整わない遠藤さん。
足元の覚束ない私をみて、慌てて追いかけてくれたのだろう。先輩社員がたくさんいる中から抜けてきたら、後から何か言われてしまうだろうに。きっとそんなことも覚悟の上で、私のことを気にかけてくれた遠藤さん。
真剣な、真っ直ぐな目で、私をみる。
言えない・・・
約束があるからなんて・・・
帰ってくださいなんて、とても言えない・・・
結局、申し出を断れず家まで送ってもらった。
彼は始終ニコニコとして「また飲み会に来てください」と、爽やかに帰っていった。
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