第五章 黄泉探偵が解くパズル、目には見えない真実

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 羽交いじめの腕は解かれなかったが、緩んだ隙間で首をひねって洋莉は頭上をふりかえった。  この状況で相変わらずふざけたことを言っている九龍はしかし、いつになく感情的な表情で洋莉を見下ろしていた。……怒って、いる? 「東堂館長に呼びだされたのよ」  九龍は眉をひそめてそれを聞いた。 「俺が凪を呼びだしたんだ」 「海棠凪?」  洋莉の問いに、九龍の眉間はいっそう険しくなった。  力の失われた腕の中からすりぬけて、洋莉は九龍と向きあう。 「あなたこそどうしていまさら邸を出たのよ。ずっとあの人の言うなりだったくせに。……犯人からの手紙をポストに入れたのも、偽の遺書を私の鞄に入れたのもあなたなんでしょう?」  虚をつかれたような一瞬のあと、九龍はその顔に例の表情を貼りつけた。  謎めいた執事の冷笑――。  洋莉はうんざりして彼を睨みつける。  もういいのよ、その顔は。 「九龍、その顔はやめなさい」  彼がこれまでずっと、海棠凪の命令下にあったことはわかっている。 「やめなさい、九龍。私に、ちゃんと言って。どうして邸を出ていったの」  洋莉は彼の両瞳をしっかりと見据えた。  そこには確かに、母の血筋のおもかげを発見できる。洋莉にはどうしたって、かよっていないものが。 「病院では君を凪から守れない」     
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