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プロローグ
その道はトンネルのようでもあり、洞窟のようでもあった。
先のみえない闇色の狭苦しい道を、純白の猫のしっぽがおぼろげに揺れながら進んでゆく。
道はだんだん下り坂になり、しだいに蛇の鱗のような模様の蔓植物で埋めつくされていった。
漆黒の闇の奥から、濃厚な死の匂いがした。
その先は黄泉のくに。
死者の想いがこごるところ。
チチチチチチ……
死と生とがまじわらずに重なろうとする夢幻のあわいで、どこからか鳥のさえずりが聴こえていた。
「ニャー」
優雅におどる猫のしっぽは、闇の奥に吸いこまれるように姿をけした――。
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