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ぐいっと腕を大回ししてぼくを誘うハスを、頼もく見つめる。きっと、これから今までにないくらいドキドキわくわくすることが始まりそうな予感があった。
そうだ。これは冒険なんだ!
ハスは面白いやつで、ぼくの好きなものをたくさん知っていた。もしも一緒に育った兄弟がいたって、そんなにぼくと趣味は合わないだろう。見ているアニメもやってるゲームも同じものが好きで、同じものが嫌いなんだ。だから話すのに夢中で歩くのが、全然苦じゃない。
「――なのに、お母さんはさ、ぼくが好きなものをぜ~んぶ否定するんだよ。そんなことやらずに勉強しなさいとかさ。この前はゲームを隠されたんだぜ」
お母さんは自分が子どもの頃にはゲームなんてなかったっと、特に厳しくしてくるんだ。ひどいよ。
「それは健司がゲームをする時間を守らなかったからだろう?」
「そんなのどこの誰だってやってることだろ? でもゲームを……」
「なに?」
「ぼく、ゲームの約束を破ったって言ったっけ?」
「言わなくてもまるわかりだよ。どこの家だってそうだ」
ハスが笑いながら言うから、きっとハスも同じ目にあったんだなとわかった。どこの家の子供苦労してるんだ、と。
でもきっとハスはゲームをまっぷたつに割られたりはしてないだろうとも思う。あれじゃあ、修理に出しても直りはしない。
「――お母さんなんて、大嫌いだ」
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