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弐  「おはよーございます」  俺が勤める双葉カンパニーは世界的進出や様々な賞を獲得しているいわば大企業だ。  就職するときにとくになりたいものがなかった俺は半分ふざけて双葉カンパニーの採用試験に臨んだ。  その結果なんの因果か受かってしまってここにいる。  といっても俺は平社員でそんな大層なものではないのだが。  「おはーようございます!雨宮さん。」  「あぁ、おはよう。」  後輩たちに軽く会釈して挨拶を交わす。  いつもどおりの日々。これから8時間労働をして適当に女の子とでも遊びに行こうかな、なんて考えていたときだった。  「あーめーみーやー君!!」  「部、部長?!どうかしたんですか?」  突然部長室から部長が飛び出てきた。  そのまま俺に突っ込んでくるものだから俺は筋肉を緊張させて全身で受け止める。  「保坂部長?」  そしてそのまましばらく動かなくなった。  保坂部長は一見とても女性らしいのだが、既婚者であり、1歳の孫だっているれっきとした男性である。  保坂部長はいつも俺らの前では背筋が伸びていていわゆるやり手のリーマンなのだが、そんな保坂部長が顔面蒼白泣く寸前の顔で飛び出してきた挙句、平社員の俺の胸で動かなくなったのだ。  その場が騒然とするのも致し方ない。  「保坂部長、何があったんですか?」  できるだけ優しく問いかけると保坂部長の肩がぴくりと震えた。  「雨宮、一生のお願いだ。」  顔は伏せたまま保坂部長は言葉を紡ぐ。  傍から見たらか弱い女性の泣き言かお願いだろう。  事実この人既婚者であるにもかかわらず男から告白まがいのことされてたりするしな。  そして俺は結構のか弱い人が好きだったりするわけで。  「なんですか?」  平気なふりして保坂部長に尋ねるのが必死なぐらい、この人は俺の理性を揺さぶる。  いや、絶対本当に崩壊はしないのだけれどこの人といると下半身が疼くのだ。それも無性に。  あぁ、今日は女の子の家に泊まるか、等という事を考えながら部長の小さい頭を撫でる。  「今日の会議、雨宮に任せたい。」
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