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撫でる手が止まった。  ん?今日の会議って?  「すみません、間違っていたら何ですが会議って。」  「ああそうか。雨宮は知らなかったかな。今日、成瀬銀行との商談取引があってな。本当は課長の小橋君に任せてたのだけれど、彼は風邪で。」  そこから言葉をにごした保坂部長だったがなんとなく言いたいことはわかった。  「俺に小橋課長の代わりをしてくれってことですか?」  保坂部長から体を離して尋ねる。  「う、うん。そういうことなんだけど…。」  チラチラと視線を投げかけてくる仕草がいちいちかわいいなおい。  おそらく保坂部長は経験値ゼロの俺が商談の場に出る勇気があるかどうかを懸念しているのだろう。  「大丈夫ですよ、やります。」  だから俺は二つ返事で返した。  いつかはやってくるだろう日が少し早まっただけのことだ。  なんの心配も不満もない。  「ほ、ほんとかい!?」  「ほんとです。その代わりと言っては何ですが、小橋課長にお大事にって伝えといてくれませんか?」  「もっ、勿論だよ、伝えておく。」  五十を超えたとは思えないほど女学生のように燥ぐ保坂部長に誰もが癒やしだと思ったことだろう。  俺も保坂部長に、今回の商談について少し説明とレクチャーをしてもらいくだんのの件が始まるまでは普段の仕事をこなした。  2時から始まる会議に、どんな相手なのだろうと、できれば女の人がいいなぁなどと思いながら俺は手を動かした。
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