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肆
肆
初めての会議。
正直な所、何を言って何で笑っていたかも曖昧で、ほとんど覚えていなかった。
なんだかずっと笑っていた気もするし、1回も笑わなかった気もする。
けれども1時間という時間は誰にも平等にあって初会議はいつの間にか終わっていた。
これは揶揄でも比喩でもない。
先方が帰るときに見送りに出るのは当然。
けれど、会議終了後いつまで経っても席を立たない俺を見かねて水卜さんが軽く肩を揺すってくれた。
それで正気を戻ったぐらいだ。
正気に戻って目の前にいたのが水卜さんでよかったと思う。
勿論美人だから得したっていう気持ちがあるけど、その時の俺の表情は真面目な彼女がクスクスと笑ってしまうほど間抜けていたらしいから。
その後、門口さん一行を送ろうと席を立った俺だが、付き添いの人が『お手洗いはどこでしょうか』と尋ねたものだから水卜さんが『ご案内します』と連れて行った。
その間門口さんは待っていますよ、と微笑んでくれたが会議室で無言が続くのも嫌で、水卜さんには先にフロントまで送ると言って俺は門口さんをフロントまでお連れすることにした。
いつもどおりの会社の廊下。
なのになぜこんなに長く感じるのかと、俺は隣で歩く門口さんを横目でそっと伺い見る。
門口さんは身長がとても高くてスマートでスーツがとても合う人だ。
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