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「つーか、別に俺じゃなくて良くね? 他に行きたがってる奴に行かせればいいだろうが」
「他に行きたがってる人ですか?」
下駄箱から靴を取り出す俺は辺りを見渡してクラス1のオタクを指さした。
「例えば……あいつ、花村とか。あいつオタクだからファンタジーとか好きそうだし」
「あの方はダメです。異世界行ったら5分で死にます」
……そうか。残念だったな花村。
「じゃあ……あいつはどうだよ。女子柔道部の主将だぜ? 絶対強いから」
俺は女子にしては体格のいい高槻を指さす。
「女性に戦わせるだなんて……勇者様なかなか鬼畜ですね」
見知らぬ地に俺を連れてって戦いましょうと勧誘するお前にだけは言われたくねぇよ。
もう面倒だ。俺はそのまま校門を出て帰路に就く。
「でも勇者様、今の暮らしは面白いですか?」
面白い? 面白いか……面白いねぇ……
「面白くはねぇな」
中学時代と比べたら確かに充実してるって訳がない。どちらかと言えばつまらないと言える。だからって異世界にはいかねぇけど――
「そりゃそうですよ、なんたって――」
ノイエの言葉を遮るように重厚なロックミュージックが流れた。
この音楽は、あれだ。普段からよく聞いている着信音だ。
誰かから電話がかかってきたらしい。ナイス着信音。
「もしもし?」
『カズマ、元気してる?』
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