ただ君の笑顔が見たくて

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会っても翔はうれしそうな顔をしない。自分の好きな映画を見た後だけ、饒舌になり得意気に映画の話しを延々と私に聞かせた。 力なく帰宅し、翌日からは電話で話す日が続く。一度だけ「よし!仕事休んでお前の家まで行くよ」と言った事があった。私は翔が来てくれるものと思って嬉しかった。 前日になって「やっぱり行けない」と言ってきた。翔の気まぐれにも仕事が休めなくなったのだろうと自分に言い聞かした。 翔と知り合って約一年が過ぎようとしていた。少しずつ噛み合わない歯車と翔の身勝手さに、どんどん気が重くなってきたのだった。 「疲れた、あそこが痛い、ここが痛い、今日は機嫌が悪いんだ」いつも彼の話すことはそれしかなく、私を気づかう言葉もなかった。「愛してる?」の返事も「愛してない」だった…あの日。
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