【戻らない依頼主】

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トルソーが着た葡萄色(えびいろ)のスーツを見つめていました。 あなたの表情そのままに、何処か淋しく見えるのは気の所為でしょうか。 何故か。この服はこの先も私の手元にあるように感じました。 富澤さんに連絡がついたところで、取りに来ない言い訳を並べられてしまいそうな──。 『ずっと、あなたが大事に持っていてくれるなら』 そんな言葉も思い出しました。 もしかしたら、あなたは私との繋がりが欲しかったのでは……と勝手ながら感じます。 だから。 いつまでも、いつまでも。 あなたがいらっしゃることを、スーツと一緒にお待ちしています。 いつか、あなたの心の整理がついたなら──。 終
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