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「仕上がりまで、さらに3週間頂いてよろしいですか?」
「うん、大丈夫」
これまた淋しげなトーンで返ってきました。
「富澤さん?」
「あのさ。もし、取りに来なかったら、どうなるの?」
「こちらとしてはいつでも構わないです。この服に特に入り用がないのなら」
「そうじゃなくて」
富澤さんは一旦きゅっと唇を引き結んでから大きく息を吸い、続けます。
「いつまでも、いつまでも取りに来なかったら……」
いつまでも。
そんな言葉に嫌な予感が過ぎります。
まさか──。
「富澤さん、死にたいほど思い悩むことがあるなら、口に出して話して下さい。早まってはいけません、私にできることがあればお手伝いします、時間が経てば些細なことだったと思うこともあるかもしれません」
私は真剣に言ったのに。
富澤さんはきょとんとした後、声に出して笑いました。
「やだ、自殺とか考えてるわけじゃないの、例えば、の話で」
「本当、ですか?」
「うん、絶対」
瞳の奥を伺いました、確かに嘘は言っていないように思います。
「──過去に、ご依頼主が亡くなってしまったことはあります。しかしその時はご家族がうちの伝票を見つけて取りに来てくださいました。なので私の経験では全くご依頼主が引き取りに来なかった例はありませんが……」
もし、そうなったなら──。
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