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お酒を二杯いただいて、皆さんのお顔を見終わってから会場を後にします。
店に戻ると案の定お客様がいらっしゃってました。シャッターが下りているから帰ろうと思ったと言われ謝りますと、
「そんな大事な日なら、休めばよかったのに。たまには休んでも罰はあたらんよ?」
優しく言ってくださいました。
確かにその通りです、何日も前から休むお知らせをしておけばよかったです。
でももとよりひっきりなしにお客様がいらっしゃるお店ではありません、やっと都合をつけて来たのに休みだった、では申し訳ないように思ったのです。
***
年も変わってしばらくしてから、富澤さんが来店してくれました。
「いらっしゃいませ」
いつもより声が大きく、笑顔も晴れやかになったのを自覚しながら挨拶をしました。
しかし富澤さんは小さな声で「こんにちわ」と返してくれただけです。
元々大きな口を開けて、がははと笑うタイプではなかったように思いますが、それにしては元気がないようです。
「どうかなさいましたか?」
ただのお客様ならば聞きませんが、なにせ同級生です、悩み事なら聞きたいと思いました。
「あの……スーツを作って欲しくて」
質問の意図を、ご依頼の内容と思ったようです。
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