ぜんぶ釘のせいだ_二稿

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 釘に問うたが、智世が口ごもる。 『お客さんがきたからポケットに入れられて、それっきり!』 「ハァ、どうやら俺の落ち度のようだ」  確かアポイント無しの来客があり、叔母不在のため永治が対応した。その時にポケットつっこまれ、こうして今に至るのだろう。 「えいじ君の落ち度、ね……」 『ドンマイ!』  智世は今度は心配そうな顔を浮かべる。 「とにかく、釘をそのまま持ち歩くなんて危ないよ」 『ちゃんとポーチに入れてね!』 「このあたりで不審者の情報があっただろう、だから」  つい稚拙な言い訳をしてしまう。姉の反応は鈍い。 「……こう、釘を指の間に挟んで、殴る作戦を」  説得力を重ねるためにデティールを掘り下げてみた。 『痛そー!』 「そんなやり方で撃退なんてダメー!」  その指摘については、姉が全面的に正しい。 「もう、そんなコトのためにこの子をつくったワケじゃないでしょ」  智世は床に置かれた和釘を指先でつつく。 『あ、う、そんな風に触られるとくすぐった、うふふ』  どことなく嬉しそうな釘の声をよそに、永治の心は冷えていく。彼女の爪を彩るネイルアートが目に入ったから。     
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