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釘に問うたが、智世が口ごもる。
『お客さんがきたからポケットに入れられて、それっきり!』
「ハァ、どうやら俺の落ち度のようだ」
確かアポイント無しの来客があり、叔母不在のため永治が対応した。その時にポケットつっこまれ、こうして今に至るのだろう。
「えいじ君の落ち度、ね……」
『ドンマイ!』
智世は今度は心配そうな顔を浮かべる。
「とにかく、釘をそのまま持ち歩くなんて危ないよ」
『ちゃんとポーチに入れてね!』
「このあたりで不審者の情報があっただろう、だから」
つい稚拙な言い訳をしてしまう。姉の反応は鈍い。
「……こう、釘を指の間に挟んで、殴る作戦を」
説得力を重ねるためにデティールを掘り下げてみた。
『痛そー!』
「そんなやり方で撃退なんてダメー!」
その指摘については、姉が全面的に正しい。
「もう、そんなコトのためにこの子をつくったワケじゃないでしょ」
智世は床に置かれた和釘を指先でつつく。
『あ、う、そんな風に触られるとくすぐった、うふふ』
どことなく嬉しそうな釘の声をよそに、永治の心は冷えていく。彼女の爪を彩るネイルアートが目に入ったから。
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