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釘バット見て智世は引いている。姉が全面的に正しい。
「なんでここが分かったの?」
「釘が教えてくれて……」
「ん?」
姉の顔が怪訝そうに変わる。永治は一瞬目を泳がせた。
「勘」
言い直したあと、やっぱりもう一回言い直す。
「家族だから」
とっさに出たでまかせ。そう言うと姉は泣き出した。
泣かせた!と釘が騒ぎだす。
「あの人、そんなこと言ってくれなかった」
それから姉は義理の両親から受けたいじめについて話してくれた。離婚の原因。話が長いので仔細は省略。あんまりにも話が長すぎて永治は釘バットを支えに座り込む。
……このつらい離婚話の一部始終を聞いて、釘が口を開いた。
『呪おう!』
釘が恐ろしいことを言い出した。
「呪おうって、お前な」
おそらくは五寸釘を刺している。藁人形?時代錯誤だ。
「呪おうなんて」
永治のつぶやきを受けて姉が笑い出した。
あ、これこのままいくと呪うことになるな。永治は察する。なんせ自分たちが手ずからつくりあげた釘だ。市販の釘より威力は出るだろう。釘バットに刺した釘たち本人だって、やる気満々なのだ。
でも。それは違うと思った。
「釘で人を呪うこともできるだろう。なんなら直接的に傷つけることだってできる」
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