ぜんぶ釘のせいだ_二稿

9/20
前へ
/20ページ
次へ
「今それどころじゃない。姉さん、釘を見ていないか」 「へ? なにクギ? サイズと種類言ってくれないと」 「巻頭釘!」 「あっ工房製? 持って帰ってきちゃったの? うっかりさんだなぁ。叔父さんに怒られるぞー」 「持って帰ってきた覚えがない……ついてきたのかもしれない」  返答がなかったので姉を見ると、姉は心配そうな顔をしていた。  失言だった、確実に。これ以上自分が不審者になる前に決着をつけなければ。永治はそっと耳をすます。 「パンツぐらい履きなよ……」  指摘を受けたので、パンツを履きながら耳をすます。さっきまではっきり聞こえた釘の声が聞こえない。 「……まさか、死んだのか?」 「えいじ君?」 「おい!? 生きてるなら返事をしろ!」  釘の地縛霊が出たらそれこそ安寧の家が事故物件になってしまう。そんなのはごめんだ。  1階から2階にかけ、くまなく声をかける。しかし返事は無い……。  裸で家を駆け回って、ようやく永治は我に返った。釘の地縛霊って、いやいや。相手は鉄くずだ。魂も何もあったもんじゃない、そもそも「釘の死」とは何を指す?     
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加