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「今それどころじゃない。姉さん、釘を見ていないか」
「へ? なにクギ? サイズと種類言ってくれないと」
「巻頭釘!」
「あっ工房製? 持って帰ってきちゃったの? うっかりさんだなぁ。叔父さんに怒られるぞー」
「持って帰ってきた覚えがない……ついてきたのかもしれない」
返答がなかったので姉を見ると、姉は心配そうな顔をしていた。
失言だった、確実に。これ以上自分が不審者になる前に決着をつけなければ。永治はそっと耳をすます。
「パンツぐらい履きなよ……」
指摘を受けたので、パンツを履きながら耳をすます。さっきまではっきり聞こえた釘の声が聞こえない。
「……まさか、死んだのか?」
「えいじ君?」
「おい!? 生きてるなら返事をしろ!」
釘の地縛霊が出たらそれこそ安寧の家が事故物件になってしまう。そんなのはごめんだ。
1階から2階にかけ、くまなく声をかける。しかし返事は無い……。
裸で家を駆け回って、ようやく永治は我に返った。釘の地縛霊って、いやいや。相手は鉄くずだ。魂も何もあったもんじゃない、そもそも「釘の死」とは何を指す?
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