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「エルとの協力を図る。幸い下地はシウス様がしてくださった。森の事は彼らが一番詳しい。そしてここはラン・カレイユとの国境になる。森の異変を察知するためには彼らの力を借りるのが一番。以上」
しごく真っ当な事を言っている。だが、エルを迫害したのは彼ら東の人間だ。それもあって帝国との和解をした現在でも、エルの人間と東の人間は互いに混じり合わないのだ。
というよりも、東の人間が一方的にエルを避けている。自分達のしてしまった事の恐ろしさを知った彼らはその罪から目を背け続けている。その結果だった。
「あの、彼らとて我々と協力するのは……」
「利害が一致する。彼らとて森を守りたい。だが、彼らばかりでは守りきることに不安が残るのもまた事実。互いの利が一致するなら協力は可能だ」
「ですが」
「第一、やってしまったことを認めずに非を詫びないからこんな面倒な事になるんだ。さっさと過ちを認めて保証なり謝罪なりしろよ面倒臭い。いい加減大人なんだからさ、頭の一つも下げればいいんだよ」
ブツブツと正論を愚痴のように吐き出すマーロウに、砦の責任者は苦虫を噛みつぶす。チェルルとしてはそんな顔をする方がおかしいと思うのだが。
「なんにしても、これ厳命ね」
「あの!」
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