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司書の証言
十勝は帰宅すると、風呂に入り、妻の作った夕食を食べる。
「今日は早かったのね」
「ああ」
電子レンジで温めない夕食は、何日振りだろうか。
アカシック・レコードには、数年後の、この妻との関係も書いてあるのだろうか。
仕事人間の自分は、捨てられてやしないかと、十勝は少し不安に思った。
「何?人の顔、ジロジロ見て」
「ん?あ、いや」
十勝は慌てて誤魔化した。
「今の仕事が終わったら、温泉にでも行こうか」
十勝の言葉に、妻は唖然とした。
「どうしたの? 急に」
「たまにはいいだろう」
変なの、と言いつつも、妻は嬉しそうに笑った。
「でもやめておくわ。約束すると、期待しちゃうから。あなたは仕事が入ったら、そっちを優先するでしょ?」
「それは… そうだが」
つまり妻も、長い自分との付き合いで、約束は果たされない確率が高いと、未来予測をしているわけだ。
なるほど、稲敷の言う通り、経験や知識で、未来予測は可能なのかもしれない、と十勝は思う。
「温泉はいいから。お花でも買ってきてよ。それくらいなら、絶対できるでしょ」
「分かったよ」
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