1人が本棚に入れています
本棚に追加
「しかし、一つお答え致しましょう。御津様は、こちらへいらっしゃいました」
「本当か!」
叫ぶ十勝に、司書は人差し指を口元に当て、お静かに、の仕草をした。
「御津さんは、どんな本を借りていった?」
「それについても、個人情報の観点からお答えできかねますが… アカシック・レコードでは、蔵書の貸し出しは行なっておりません。閲覧のみです」
司書の言葉を聞いて、ハッとする。
「もし… 本を持ち出したり、コピーしたら、どうなるんだ?」
御津は、瞬間記憶能力を持っていた。
一度見た情報は忘れない。
それゆえに御津は就職活動でも、秘匿性の高い情報を持つメーカーから、倦厭されていた。
司書は、怪しげな笑みを浮かべ、こちらを見ている。
それに気付きましたか、とでも言うように。
「それはもちろん、」
「どうなる」
冷たい汗が、十勝の首筋を伝う。
「持ち出しには罰則がございます。
またコピー、書き写しについても、持ち出しとみなし、」
司書の言葉が、静謐な書架に響いた。
「処分させて頂きます」
最初のコメントを投稿しよう!