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事件の真相
板垣教授は、朝の河川敷を眺めていた。
一人の男性が亡くなったという現場からは、すでに規制線もブルーシートも、取り払われていた。
「教授」
呼ばれて振り向くと、十勝が立っていた。
「御津が亡くなって、もう一週間。早いものです。ブルーシートは、もうなくなったのですね」
「ええ、現場検証は、終わりましたから」
「やはり、事故でしたか。解決して良かった」
「そうですね。最後の仕上げ、というところでしょうか」
十勝が、少し話しませんか、と言って、二人は並んで歩いた。
「現場は、やはり気になりますか?」
「ええ。御津は、かつての教え子でもありますし」
「実は、まだ分からないことがありまして」
「何でしょう」
「御津さんは、死亡推定時刻の直前に、研究室に電話を掛けていますね。それで、出た稲敷さんの話によれば、すぐに切れてしまったそうなんです。妙だと思いませんか?」
はあ、と板垣は返す。
「つまりですね。御津さんが電話の途中で力尽きて、応答が無くなったとしたら、普通は、稲敷さんのほうから切るんではないかと」
「そうかもしれませんね」
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