1人が本棚に入れています
本棚に追加
「待ってください。刑事さんは、その第三者が私だと、仰りたいのですよね。
でも何故私が、御津を、殺めなければならないのです?」
十勝は、一冊の本を取り出した。
「これでしょう」
「…!」
「あなたが執筆して、御津さんも編纂に携わった、先日発売されたばかりの本だ。
テキストデータを検索にかけてみましたが、ネット上のある論文と、本の内容のかなりの部分が一致しました。つまり、論文盗用です」
板垣の表情が、強張った。
「論文を書いたのは、他大学のある学生です。もしかしたら書いた本人も、盗用に気付かないかもしれません。
でも、御津さんは気付いた。彼は、一度読んだ論文は、忘れないから」
板垣は拳を握りしめ、少し震えたかと思うと、人が変わったように叫んだ。
「あいつは、頭が固すぎるんだ!
学生は、単位だの、卒業だのにしか関心が無い。この結果の価値が分からんだろう。それを私が、再利用してやっただけだ。
なのに、出版間近になって、御津がそれに気付いてしまった!」
連行される板垣を見て、十勝は思う。
御津は真実を知ってしまった時、どんな気持ちになったのだろうか、と。
最初のコメントを投稿しよう!