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御津について
「随分と若いな」
刑事の十勝は、手を合わせ臨場すると、そう感想を漏らした。
「被害者の身元は?」
「K大学教職員の身分証を所持していました」
身分証には、御津という苗字が印刷されている。
河川敷から車で二十分ほど走ると、K大学に到着する。
大学側で調べてもらうと、脳機能情報科学科の、御津という名の助手が出勤しておらず、欠席の連絡も無いということだった。
その足で脳機能情報科学科の建屋に行き、御津の所属する研究室へと向かう。
十勝が、板垣研究室と書かれた部屋に入ると、髭をたくわえた老年の教授が、少し青ざめた様子で出迎えた。
「先程、連絡は受けて、話は伺いました。
確かに、うちの助手の、御津で、間違いありません」
板垣教授は、肩を落として、そう答えた。
「御津さんは、どういった方でしたか? 誰かに、怨まれていたとか」
「そんな。御津が、殺されたと言いたいのですか?」
「いや、いや。
ただ今は、色んな可能性を考えて、捜査をしていまして」
十勝は、うろたえる板垣に、ありきたりな台詞を返した。
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