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御津という人物は、瞬間記憶能力があり優秀で、しかし世渡りは下手、完璧さを周囲にも求めてしまうような気質で、疎まれる部分があった。
だが、殺されるまで怨まれていたという根拠にしては、決め手にかける。
やはり事故なのだろうか、と十勝は思う。
しかし、なんとなく違和感を覚えた。
調べたところ、河川敷上の歩道は、御津の通勤路であったようだ。
死亡推定時刻は夜の十時頃。
少し遅く、あたりは暗かっただろうが、慣れている道で、下の河川敷へ滑落するだろうか。
「昨日、御津さんが何時に帰ったか、分かるかな?」
んー、と学生たちは、考える。
「確か、九時過ぎだったと思うけど」
「ていうか、稲敷さん、十時頃電話もらってなかった?」
最後の学生の言葉に、十勝は耳を疑った。
「なんだって。どんな電話?」
「いや、なんか。変な電話で、すぐ切れたらしいですけど」
十勝は急ぎ、御津の携帯電話の解析結果を問い合わせると、確かに十時少し前に、発信履歴が残っていた。
リダイヤルする形で、この研究室にかかっていた。
それに、稲敷という人物が出たのだろう。
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