アカシック・レコード

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「刑事さんは、"アカシック・レコード"というものをご存知ですか?」 「アカシック? いや… 何ですか、それは」 稲敷はタブレット端末を取り出すと、検索エンジンにそのワードを打ち込む。 表示された画面を、十勝に差し出した。 「アカシック・レコード。宇宙の誕生から終わり、過去から未来に渡る、全ての事象が記録されている場所です」 「そんなものが… あるんですか」 怪訝な顔をする十勝に、稲敷は肩をすくめてみせた。 「だから、言ったじゃないですか。科学的じゃないって。あるかどうかは分かりません。 ただ、うちの研究室の専門分野が脳機能情報科学という、最先端かつニッチであることもあって、一時期この手の話題が流行ったことがありました」 脳機能情報科学は、最近流行してきた分野の新しい科学だ。 まだ机上の空論ではあるが、理論上は全ての事象は数値化することが可能で、人間の脳を、外部環境と非接触型で接続し、直感的に電子機器を操作できる時代が来るらしい。 情報工学や、医療の分野で応用が期待されている。
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