もう天使ではいられない 1 モンシェリ

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自分的には最大限のお愛想を行ったつもり。容姿もやけど愛想の悪さもママのDNAは0。 アンナちゃんは近所友達で先月シングルで子供を産んだ。近所友達はわりにポツポツ結婚とかも出てきてる。学校の友達は彼氏無し歴18年も多いけど。 アンナちゃんの家でケーキをごちそうになって1時間ほどで店の前まで戻った。お客さんはいなくてママとイクさんだけが小窓の向こうに見えた。また話をするのも面倒だから裏の階段から直接二階へ。 「エラいエラい(賢い賢い)とは  聞いてたけど、東大とはなあ、  ほんま、ビックリしたで」 イクさんがまた私の話をしているので退屈しのぎに店直結の階段を二段ほど降りて二人の話を聞いていた。 「血は争えんなあ、ヨシオカさんと  同じ東大やなんて」 「3つくらいの時かなあ、あの子が  店の小銭を簡単に数えるもんやから、  慌てて塾通い始めたんやわ。  あの人に似て賢いんや!て思たら  嬉しぃて、嬉しいてェ♪」 「何言うてんの!顔やで顔!  私、見てビックリ!」 「似てるやろ!!!!  なあ、ヨシオカそっくりやろ?!」 恋し始めの同級生達さながらのママの興奮が響く。 「このカウンターの端で仕事帰りに  ビール二本、静かに飲んではったわ」 「単身赴任で大阪へ来て二年でまた  地方へ行ってそれきりやけど」 「まさかアンタらがあっちのモンシェリ  にも通う仲とはなあ」 「イク姉ちゃん、お父さんにも黙ってて  くれてありがとう」 「私も似たり寄ったりで息子産んで  育てたもん!好きやった、  それでエエんよ!それで!」 「いつかヨシオカがここへ寄ってくれて  あの子を一目見てくれたら・・・  って思うだけで今日まできたし  明日からも頑張れるわ!」 「もう1回乾杯や!」 女二人が盛り上がってるとこへ常連客がやってきて大宴会になったので部屋を出た。 散歩がてらに商店街。抜けるとビルの谷間にラブホテル・モンシェリが見える。 ーいつかヨシオカが寄ってくれてー ・・・ないなあ、ないでママ。それは隕石がうちの店直撃くらいの確率や・・・ でもママ、待つんやね、 カランカラン聞きながら・・・ 「あれ、モンシェリのママの子やないの?」 顔見知りのおばちゃん達の声に会釈する。 ーモンシェリのママの子ー いつも言われてきた。 でも私、ーママのモンシェリの子ー やったんや・・・。 ひょいと見た足下、モンシェリのネオンで ピンクに染まってた。
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