白狐物語

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小娘は私をあろうことか家に持ち帰り、ミルクをさしだし、看病してくれた。 本当は油揚げが良いがそんな贅沢は言っていられない。 そして、偶然なのか天の計らいか獣医である父に介抱させ、なんと復活させた。 生かされるということはそういうことだ。身体は、一週間で完治した。 だが、妖力といわれるものは、人間の願いや思いを糧に作られる。それを叶えて、神様から授与されるものも多い。 あのほこらに戻ったところで、もう願いを言うものはないだろう。 「もふもふ」だなんだといいながら、小娘は大事そうに僕を抱える。その愛らしい眼差しもここにいたい理由だ。 だが、あと三日もすれば、僕はここをさらなければならない。 先ほど、小娘の父がそのような話をしていた。怪我が完治すれば、ここに置いておく理由もない。当然の判断だ。
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