白狐物語

5/6
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
小娘が寝ている隙に獣医である父が僕を森へと返してくれた。 あれから十年。その小娘も今では、立派な大人になっていることだろう。 出会ったのが、小学校高学年くらいだったから、二十歳ぐらいにはなっているだろう。元気かな。 僕はというと、運よく仲間の狐に会えて、今ではその地域では立派な稲荷神社に奉られている。沢山の朱色の鳥居と沢山の参拝者。 願いを言うことは悪いことじゃない。欲望に飲み込まれぬ、純粋な願いはただただ微笑ましい。 この十年で沢山の願いを叶えた。いつかその小娘の願いを叶えるために。 恋人がほしい、お店の経営がうまくいってほしい、借金を返したい、本当に沢山の沢山の願いを。 おかげで神様から褒美ももらい妖力も忽ち復活した。今では夏祭りなど人間に化けて楽しむこともできる。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!