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小娘が寝ている隙に獣医である父が僕を森へと返してくれた。
あれから十年。その小娘も今では、立派な大人になっていることだろう。
出会ったのが、小学校高学年くらいだったから、二十歳ぐらいにはなっているだろう。元気かな。
僕はというと、運よく仲間の狐に会えて、今ではその地域では立派な稲荷神社に奉られている。沢山の朱色の鳥居と沢山の参拝者。
願いを言うことは悪いことじゃない。欲望に飲み込まれぬ、純粋な願いはただただ微笑ましい。
この十年で沢山の願いを叶えた。いつかその小娘の願いを叶えるために。
恋人がほしい、お店の経営がうまくいってほしい、借金を返したい、本当に沢山の沢山の願いを。
おかげで神様から褒美ももらい妖力も忽ち復活した。今では夏祭りなど人間に化けて楽しむこともできる。
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